「飢えた人々は、食べ物以外のことを考える余裕がありません。蔓延する飢餓と貧困が人々を栄養不良に追い込み、労働力の低下、就学者数の減少、集中力や学習力の悪化を促しています。また、病気に感染しやすく、免疫力がないために著気的な心身の発達に障害を生じ易くなります。このように、空腹は、結果的に一人一人の生活意欲を衰弱化させ、国の経済・社会発展への道の妨げとなっているのです。」(国連食料計画資料2005年度版) |
よく知られているように、世界人口のわずか2割でしかない先進国に属する私達は、地球の富の8割以上を独占し、残り8割の人々が2割にも満たない富を分け合っています。この結果、貧富や地域格差は広がるばかりで、環境問題も悪化しつつあるのが現状です。
さらに世界には、一年でおよそ600万人、5秒に一人の割合で、5歳未満の子供達が栄養不良に関連する原因で命を落としています。これは世界全体の5歳未満児の死亡原因の半分以上を占めており、たとえ生き延びることが出来たとしても、子供の栄養不良は心身の発達を妨げ、将来に取り返しのつかない影響を及ぼします。
特に成長期の子どもの栄養不良は、心身の健全な発育を妨げやすく、貧困地域の人的資産形成にも支障をきたしています。世界の飢える子どもの数はおよそ3億人。そのうち1億3,000万人はまったく学校に通っていない状況です。
栄養不良は世界の子どもの死亡原因の60パーセントを占め、毎日300人の妊婦が鉄分不足で出産中に死亡しているという現状を受け、国連が定めたミレニアム開発目標の実現への取り組みのなかで、飢えた人々の栄養改善を図ることは極めて重要とされています。
貧富の格差、地域格差、教育格差、医療格差……、それにともなって頻発する紛争や難民の発生、そして、戦争の勃発。これらの問題は21世紀の今に始まったことではありません。しかし、事態は沈静化へ向かっているというよりも深刻化していると言わなければならないでしょうか。
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「過去には国際開発努力は、真の緊急性を持たなかった。締め切り時間はなかったし、人道的関心の他には何の至上命令もなかった。失敗の結果は貧しい人々に降りかかるだけだった。だがいまやそのすべてが変化しつつある。」
「いまや締め切り時間がある。開発を達成できないことが、貧しい人々だけでなくすべての人々に影響を与えるからである。従って開発のコンセンサスを実施に移すことは、私たちの文明にとって最低限の道徳条件になっただけでなく、文明存続の最低限の実質的条件ともなっている。」 (「世界子供白書」 ユニセフ 1995年) |
言うまでもなく、「文明存続の最低限の実質的条件」が否定される事態とは、環境の劣悪化を巡って、古くはイースター島で起こった大量殺戮のように、人間が人間らしく生きていくことができず、生存を懸けて互いに憎しみ合い、身内でさえ殺し合う事態になることに他なりません。このような事態を忌避し、平和と友好を礎とした市民社会を構築することは、今では好むと好まざるとに関わらず、先進国に住む人々に課せられてる重い義務であるとさえ言わなければならないのではないでしょうか。
島国であり、資源に乏しい日本が経済発展の成功例としてアジアで広く認めらたという実績は、開発途上国にとっても有益なヒントに成り得るに違いなく、古く、江戸時代から寺子屋での庶民の教育に重点をおきながら、地道な農村開発を続けてきた日本型のモデルは、必ずや開発途上国でも成功への道筋になると私たちは確信しています。 |