桃井和馬

「希望へ! 人間は何をしてきたのか?
~悲劇の現場をめぐって~」

大日本図書刊



 悲劇の現場をめぐって、いうサブタイトルがついているのに、メインタイトルは、『希望へ!』となっている。

 この本で語られているインドネシアの熱帯林破壊、南アフリカでの壊滅的なエイズ拡大、いなまお燃焼しているチェルノブイリの原子炉、そして、隣人たちが殺戮者に変わり果てたルワンダの大量虐殺。どれもこれも、到底「希望」へは結びつかない。むしろ“絶望”という二文字こそふさわしい気がする。だが、これらの悲劇の現場は単独で生まれたのではなく、国、あるいは、世界レベルの経済や権力の驕りと深く結びついていることを著者は平易な文体で明らかにしていく。もちろん、私たち日本人の生活とも無縁ではない。

 桃井氏が本書のタイトルを「希望へ!」としたのは、私たち一人ひとりにこそ、この絶望的な状況を「希望へ!」とつなげていく責任があるからに他ならない。忘れてはいけない。逃げることは許されないのだ。

武井秀彦(中学校教諭)