桃井和馬

『もう、死なせない! ―子どもの生きる権利―』

フレーベル館刊



 ビールのテレビCMにも出ていたナイスガイのフォト・ジャーナリストが贈る、世界の子どもたちの笑顔と現実がぎっしりと詰まった一冊。実は、マスターとは同い歳で仲がよく、臨時に店のマスターをしていただいて大盛況だったことも。
 彼の命名の由来は、さすがで、牧師の息子でもあることから和馬(=柔和な馬=ロバ=イエス・キリストのエルサレム入城のときにも重要な役割で登場)と名づけられたんだそうな。

 もっとも、柔和でゆっくり歩くロバさんとは違って、この和馬氏の活躍の場はあまりに広く、あたかも地球全体を相手に格闘しているようにも見える。しかも、人間の深淵をシャッターで捕らえ続けるような日々を過ごしながら、強靭な精神力を保ち続けられるのは、信仰もさることながら、持ち前の明るさと酒の強さでもっているに違いない。(奥さんが素敵だからにきまっている! とは、世間のもっぱらの見方?)

 国連総会で採択された『子どもの権利条約』を日本が批准したのは1994年。それから10年以上が経っているが、世界は子どもたちにとって、住みやすいものになってきていると言えるのだろうか。子ども向けに書かれているが、今を生きている大人たちの責任としても、しみじみと見つめたい。

 あとがきには、この本が「見て」「読んで」「子どもと大人が話し合い」「考える」きっかけとなれば幸いです、とあるが、子どもがそばにいなくとも、ぜひ一冊はお手元に置いて、なんとなく眺めて見るだけでも価値があることだろう。特に、国連やNGOで子どもに関わる、ちょっと疲れ気味の関係者にはお勧め。子どもたちの笑顔と輝く瞳にやられて、もう一度、底力が沸いてくるはずだ。

 全国学校図書館協議会選定図書(FXS)





2006年9月8日 7:24 着

・ベネズエラからの桃井氏のコメント

 現在、ブラジルで取材を続けている桃井和馬です。
 MLで、この本を紹介して頂けること、心から感謝です。
 そういえば、ブラジル時間で今日(9月7日)の午前10時に進藤さんから電話が入っていました。
 日本時間では午後10時ですから、エポペがにぎやかな時間ですね。

 私は、今、南米で起きている大きな社会変革のうねりを取材しています。

 ベネズエラのチャベス大統領が起こしている「ラテン・アメリカ革命」で、日本では 扇動者チャベスが、過激な言葉でアメリカを挑発しているという側面しか紹介されていません。しかし、これを調べていけばいくほど、まるでチェ・ゲバラのキューバ革命がよみがえったような錯覚さえ覚えてしまうのです。
 でも、違うのは、キューバ革命が純粋な共産主義を目指したのに対し、敬虔なクリスチャンであるチャベスは、「キリストの生き方に近づきたい」とも発言し、根底から中南米を変えようとしているのです。
 チャベス大統領の評価は、わたし自身、まだ決めかねています。
 でも、これまで見たどの国家代表より面白い!
 彼の行動をなぞるだけで、わくわくしてくるのです。

 ガルシア・マルケスは2000年「チャベス氏は、本物の革命家かもしれないし、本物の独裁者かもしれない」とも発言しています。
 しかし、現時点では、本気で社会を改革しようと、本気で行動を起こしていることは確かです。
(ただ、取り巻きの中では、腐敗が起きているのも事実ですが・・・・・)

 帰国は9月12日。
 時差が取れたころ、チャべス報告のために、エポペに伺います!

熱い南米の風を感じながら
桃井和馬