2005年 ベトナムスタディツアー報告

HINT メンバー4 名で、8 月4 日から9 日までベトナムスタディツアーに行きました。 成田空港で、今回が初海外旅行になるメンバーに「実は怪しい人は靴やパンツを脱がされるらしいよ」なんてふざけて言っていた酒井のベルトが、見事探知機にひっかかりました。 その結果、検査官の前でベルトを外し靴まで脱ぐことに(!?) なったものの、概ね順調なツアーになりました。( パンツも脱ごうかとしたんですが、悪ふざけする空気ではなかったようです)

今回のツアーの目的は、ホアン司教が運営する薬草園プロジェクト( 牛豚飼育、薬草栽培、漢方薬精製など) の確認及び意見交換と、タン・ハー村のラグライ族コミュニティでの母子健康手帳作成でした。 母子健康手帳作成といえば、3 年前のことが思い出されます。 酒井は前回、インスタントカメラとデジタルカメラでの撮影役としてタン・ハー村を訪問していますので、今回で2 回目。 あの時の子供たちがどのくらい大きくなっただろう、と再会を期待しての訪越だったのですが、残念ながら「健康手帳作り」は諸般の事情から今回は叶わず、訪問時間の多くをホアン司教プロジェクトの視察と意見交換に使いました。 薬草園プロジェクト 3 年前、私たちがホアン司教から示された「今後のプロジェクト」とは、次の内容でした。

1) タン・ハー村に漢方薬の農園を開墾・運営したい。
2) 初等教育を終えた現地の子供たちをホー・チ・ミン・シティの高等教育機関に就学させ、漢方医学・漢方薬を履修させたい
3) 当面は既に資格を持つスタッフが漢方薬農園の維持管理を行ない、ラグライ族コミュニティを含むタン・ハー村全体の医療行為と、医薬品( 漢方薬) 処方を行なって村全体の保健医療面に資するよう支援を行なっていく。
4) 将来的には、ホー・チ・ミン・シティにて漢方医、漢方薬剤師の資格を取得した履修生たちをタン・ハー村に戻し、この漢方薬農園の管理運営と医療行為、医薬品調合等を担わせていきたい。

実際に3 年前に現地で何があったかといえば、二つの教会施設と何もない土地だけでした。 施設も何もない代わりにホアン司教の熱い夢がそこにはあり、進藤代表、そして同行した全てのメンバーが、その大きすぎるホアン師の構想と夢に若干の逡巡を覚えたことを、今も記憶しています。 そして今年。 現地に到着し、ホアン司教の施設で私たちが眼にしたものは、相変わらずの赤土と何もない敷地……ではなく、赤土を抜けたところに拡がる一大プランテーションでした。 ◇ハコモノではなく、人を育てる 器をつくる 3 年前何もなかったその土地には、漢方薬を育てるグリーンハウス、ハーブを植える土地、糞をエネルギーとして煮炊きに活用する豚舎、少数民族のために貴重な栄養源のミルクを搾乳する牛舎、とうもろこしや米の栽培を行なう広大な敷地……など、見渡す限りの一大農園が展開されていました。このうちグリーンハウスについてはHINTから援助を行いました。驚いたのは農業を専門的に学んだわけでもないホアン司教自らが、すべての運営を行なっており、それらが現地の貧しい人たちのためのものとして機能しているのです。 我々日本の市民団体が、どんな支援活動ができるか、という答えがここにあると感じます。 基本的なスタンスとして、巨額な支援金で「ハコモノ」を次々に作るよりも、現地を継続して支えていく人を育て、そのための器を作ることの方が大切ではないかと思うのです。これこそが、我々HINT が今後も支援活動として大切にすべき方向性だろうと、施設の上に広がる高い空と一面に広がる広大な農園を眺めながら、私はずっとそんなことを考えていました。

HINT 監査 酒井 匠